四次元ことばブログ

辞書と言葉に関するあれこれを、思いつくままに書き記しておくことにしました。

ぼくのかんがえたさいきょうの今年の新語2020

 

去年に引き続き、「今年の新語2020」の理想編成を勝手に考えました。これはあくまで理想編成であって、予想ではありません。そこんとこよろしくな。

 

これが「ぼくのかんがえたさいきょうの今年の新語2020」だ!

 

10位 警察

けい さつ[警察](名・他サ)他者の行為を必要以上にきびしく指弾すること。また、そういう人。〔多く、「…警察」の形で使う〕「日本語―・自粛―」

5年ほど前からネットスラングとして継続して使われていましたが、今年「自粛警察」が報道にも現れて広く知られるようになりました。

 

9位 ウェビナー

ウェビナー(名)〔webinar ← web+seminar〕オンラインで行われるセミナー。

コロナ禍で多くの人が経験するものになりました。ウィキペディアには2005年から記事があるなどことばとしてはそこまで新しくないのでこの順位ですが、国語辞書にはまだ載っていません。

 

8位 こする

こす・る[(擦る)](他五)〔俗〕同じ話題を繰り返し扱う。「前のネタをもう一度―」

もとお笑い用語のようですが、スラング的に一般にも使われるようになり、「どんな意味?」と気にする人も増えました。

 

7位 お迎え

お むかえ[お迎え]-ムカヘ(名・他サ)〔俗〕〔大切にしようと思っているものを〕手に入れること。「新しいぬいぐるみを―する」

もとはドール(人形)趣味の言い方でしたが、昨年から今年にかけ急速に広まり、人形以外でも靴や本など、思い入れのこもった大事なものを手に入れる場合にもいうようになりました。動物園の掲示で使われているのを見たのが入選の決定打です。

 

6位 手指

しゅ し[手指](名)手首から先の部分。てゆび。「―衛生・―消毒」

既存の辞書には「手の指」という意味しかありませんでした。しかし、もともと「手指衛生」など「手」全体を指す用法があり、今年「手指消毒」がさかんに言われたことでそのことが広く認識されました。今年改訂された『新明解国語辞典』では「てゆび」で立項され「手や指」という意味も明記されました。

 

5位 布マスク

ぬの マスク[布マスク](名)〔洗って再利用できる〕布製のマスク。ガーゼマスク。

洗濯できるタイプの布製のマスクを「布マスク」ということが普通になりました。使い捨ての不織布マスクも布は布なのに、面白い用法です。以前から例はあることはありましたが、今年になって一気に定着したものです。

 

 

4位 ソーシャルディスタンス

ソーシャル ディスタンス(名)〔social distance〕〔感染症予防などのために〕人と人との距離をとること。社会的距離。フィジカルディスタンス。「―を保つ」

新型コロナに直接的にかかわる用語の中で最も定着度の高いもののひとつで、収束後も感染症対策の文脈で広く用いられ続けることが予想されます。

 

3位 ぴえん

ぴえん(副・自サ・形動ダ)〔俗〕少しだけ泣いているようす。「失敗しちゃった。―・―な話・―こえてぱおん〔=「ぴえん」を強調した言い方〕」

2010年代末から2020年代初頭の流行語の代表格と目されつつあります。これまで、「ちょっと泣く」様子を表すちょうどいいオノマトペがなく、しっくりくる表現として受け入れられたものと思います。単なる流行語として終わるかもしれませんが、この時代を振り返ったときに必ず参照されるワードにはなるはずです。

 

2位 リモート

リモート(名)〔remote〕〔通常は現地で行うものについて〕遠隔地から、オンラインで物事を行うこと。「―での会議・オフィスの―化」

これまで「リモート」は、「リモートコントロール」「リモートデスクトップ」など、ほとんど造語成分としてしか用いられてきませんでした。意味的にも、基本的には「離れている」ということしか表しません。ところがコロナ禍以降は、「リモート」単独でも普通に使えるようになり、かつほとんど「オンラインで」という意味に限定されています。たいへんな変化です。

 

大賞 密

みつ[密](名・形動ダ)ひとつの空間に人が密集している状態。「―にならないようにする・―を避ける・―な環境」[動]密る〔俗〕。「だいぶ密ってるよ」

新型コロナウイルス対策として東京都が提唱した「3密」から出た言い方で、「密」単体では特に多くの人が密集している状態をいうことが多いようです。会見を聞いたときはなんじゃそれと思ったのを覚えていますが、あっという間に定着しました。

「密」を単独で使うのはこれまで「人口が密だ」「連絡を密にする」などという言い方がありましたが、一箇所に人が集まっている状態をいうことはなかったはずです。また、形容動詞化したり、俗に「密る」と動詞化しているのにも注目です。「密かった」のように形容詞風にもいうようですが、これは過渡期のもので、定着はしないかもしれません。

個人的に印象深いのは、『ダーウィンが来た!』の10月4日放送回で、ピラニアの食事風景が「食事中はを避け、鋭い歯が当たるのを回避」と描写されていたことです。さも昔からそういう言い方があったかのような自然さで、これほどの短期間にここまで日本語の語彙に溶け込んだ新語もないだろうなと感じたものです。

 

今回は特別賞もあります。

 

特別賞 新型コロナウイルス

まあ、記録として外せないでしょうということで。

 

選外はありません、というか候補になる新型コロナウイルス関連語が多すぎるので、選外ですら絞ることができません。

 

では、本家が発表されたら起こしてください。