去る10月1日、一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)主催のイベント「『舟を編む』先行試写会&トークショー」に足を運んでまいりました。10月13日から放送が開始されるアニメ『舟を編む』1・2話の試写の後、原作者である三浦しをん先生、小説の挿絵を描かれ、また今月からコミック誌『ITAN』でコミカライズ版を連載される雲田はるこ先生、『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』の著者で、辞書コレクターとしても名高いサンキュータツオ氏の3名によるトークショーが行われました。
アニメの出来は、わりとよかったとだけ言っておきましょう。1話にはドンと肺腑を衝かれたニクい演出もあって、この場面だけでも今すぐに見返したいという思いに取り憑かれています。詳しい感想や解説は本放送のときに譲ります。
トークショーを勝手に解説
筋金入りの辞書愛好家でいらっしゃるタツオ氏と三浦先生、漫画版執筆のため辞書の世界に踏み入ろうとしている雲田先生のトークは非常に濃いものでした。辞書好きの私は終始膝を打ったり時には首をかしげたりしつつ鼎談を拝聴しておりましたが、会場に来集したアニメファンには話の全容が伝わっていたのか、不安です。
ここで誠に余計なお世話ではございますが、お話の内容を勝手に補足させていただきます。
タツオ氏「『大渡海』の編集方針が、『簡潔かつ明瞭』だというのがポイント。『三省堂国語辞典』に近い方針を掲げている」
作中、国語学者である松本先生が、新しい辞書『大渡海』の編集方針を述べるシーンがあります。その方針は、「簡潔」かつ「明瞭」であることでした。
このような方針をとる実在の辞書として名高いのが、『三省堂国語辞典』(以下、三国)です。三国は初版(1960年)のあとがきでこのように述べています。
解説の基本方針の第一は、そのことばの概念が成立するために必要な条件を分析し、得た結果を簡潔で美しい日本語に表現し、一読してことばのイメージがまざまざと思い浮かぶようにくふうすることであった。
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