四次元ことばブログ

辞書と言葉に関するあれこれを、思いつくままに書き記しておくことにしました。

物書きに使っていただきたい かゆいところに手が届く特殊辞書カタログ

 

やあみんな、文章、書いてるかい。


文を書くことを趣味や仕事にしている人であれば――いや、そうでなくても、レポートやSNSなどで文を書く機会がある人であれば誰でも、ことばに関するちょっとした疑問や困りごとにたびたび直面しているはずです。ところが、手持ちの国語辞書では解決できず、Google先生にお伺いを立てても出てくるのはYahoo! 知恵袋や信頼性に欠ける安っぽい記事ばかり、ということがよくあります。


ああ、かゆいところに手が届く、いい資料がないものだろうか……。

 


ありますよ!!!!!

 

 

脇目も振らず辞書を集めまくっている私が、実際に使い倒して「こいつは便利だ」と感じた、かゆいところに手が届く特殊な辞書たちをご紹介いたします。必ずや、文を書くみなさまのお役に立つでしょう。

 

  •  「どういう感じ」にまで踏み込んだ 『日本語 語感の辞典』
  • 「言いたいことばが出てこない」を解決 『早引き類語連想辞典』
  • 記号に特化した唯一の辞典 『句読点、記号・符号活用辞典。』
  • 自然な敬語を使いこなす 『敬語のお辞典』
  • 国語辞書にない俗語が満載 『日本俗語大辞典』
  • 日本語母語話者にも役に立つ 『日本語文型辞典』
  • 語と語の結びつきを確かめる 『てにをは辞典』
  • オノマトペを楽しむ 『日本語オノマトペ辞典』
  • まだあるよ
    • 『当て字・当て読み漢字表現辞典』
    • 『岩波日本語使い方考え方辞典』
    • 『現代語古語類語辞典
    • 『言葉に関する問答集 総集編』
    • 『ことわざのタマゴ 当世コトワザ読本』
    • 『コンサイスカタカナ語辞典』
    • 『文章表現のための類語類句辞典』
    • 『表現類語辞典
    • 『法令用語ハンドブック』
    • 『用法辞典』シリーズ

 

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「今年の新語2018」を予想してテンションあげみざわ

 

冬だ! 年の瀬だ! 今年の新語だ!

 

こんにちは。今年の新語ガチ勢のながさわです。

 

いよいよ「三省堂 辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2018』」の選考発表会が明後日に迫ってまいりました。しかも今年の選考発表会はあの超人気イベント「国語辞典ナイト」とのコラボレーションということで、期待に胸が躍(ダンス)っちまってます。

 

昨年はランキングの予想にも挑戦したのですが、的中したのは10語中1語+選外1語という惨憺たるありさまで、この一年間は辞書の上に臥し用例カードを嘗めて復讐に燃えていました(昨年の予想結果)。

 

そんな中、ランキングの予想を難しくする事象が二つ発生し、今年の新語界隈に激震が走りました。

 

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【事件】精選版日本国語大辞典が無料! 急いで引け!

 

精選版 日本国語大辞典』(以下、『精選日国』)という辞書があります。

 

精選版 日本国語大辞典 全3巻セット

精選版 日本国語大辞典 全3巻セット

 

 

3巻に及ぶ大部の辞書で、定価で揃えると45,000円(税別)になります。うまい棒が4,500本買える計算です。

 

これがなんとこのたび

 

100%OFF

 

で使えるようになりました。

 

は?????? 罠かな?

 

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高校生向け『三省堂現代新国語辞典』第6版がヤバいから高校生じゃなくても買え

2018年10月16日(辞書の日)、『三省堂現代新国語辞典』の第6版が発売されました。

 

三省堂現代新国語辞典 第六版

三省堂現代新国語辞典 第六版

 

 

唯一の高校教科書密着型辞書」を自称しており、最新の教科書や入試問題を調査した上で、他の辞書には載っていない語句や意味を載せていることを売りにしています。高校生の自習にこれ以上ふさわしい辞書はないでしょう。

 

類義語の比較や用法にも詳しいので作文にも用いることができますし、人名や作品名といった百科的な項目の説明は要点をおさえていてわかりやすくなっています。

 

このあたりのおりこうな宣伝公式ページを読んでいただけばよろしい。

 

三省堂現代新国語辞典』の実力はこんなものではないのです。まあ見てください。

 

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「びびる」の嘘語源を正す 「平安時代から」はガセ

 

今回は長文になりますので、最初に概要をまとめてしまいます。

 

・「びびる」の語源として広まっている平安時代からあることばで、戦で鎧が触れ合う音に由来する」という説は誤りであると考えられる。「びびる」の用例が確認できるのは江戸時代から。
・この説は平成に入ってから突然現れたもので、どうやら1988年に出た本の誤読から生まれたようだ。
・「びびる」がオノマトペに由来しているという点はおそらく正しい。

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ネットで「びびる」の語源について調べてみると、以下のような説がもっともらしく記されています。

 

「びびる」は平安時代末期からあることばである。むかし、大軍の鎧が触れ合う「びんびん」という音を「びびる音」といった。源平の合戦における富士川の戦いでは、水鳥の飛び立つ音を聞いた平家軍が、これを源氏軍が攻めてくる「びびる音」だと勘違いし、びびって逃げ出したというエピソードがある。

 

あちこちに同じような記述があるため、信憑性があるように錯覚してしまいますが、この説には学問的な裏付けがまったくありません。要は、嘘語源なのです。

 

どうしてこの説が誤りだと言えるのか、根拠をひとつずつ挙げていきます。

 

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「藪医者」の語源は地名の「養父」ではない

下手な医者のことを「藪医者(やぶいしゃ)」と言います。この「やぶ」が、但馬国(今の兵庫県北部)の地名「養父(やぶ)」に由来するという話(以下「養父説」)があります。

 

結論から言うと、これは誤りです。

 

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『大辞林』デジタル版のヤバい項目一挙紹介

 

⚠ 2018年4月現在の内容です。2019年9月に『大辞林』第4版が刊行され、下記の問題点は大部分が改められました。

 

三省堂が刊行している中型国語辞書の『大辞林』には、デジタル版が存在します。その名も「スーパー大辞林3.0」。これは、単に書籍版の『大辞林』を電子化しただけのものではありません。新語などが大幅に増補されており、書籍版にはない項目がたくさん収録されているのです。

 

大辞林 第三版

大辞林 第三版

 

 ▲書籍版『大辞林』第3版

 

fngsw.hatenablog.com

▲『大辞林』のデジタル版については以前詳しく書きました

 

デジタル版の辞書には、紙辞書と違い、紙幅の制約がありません。紙辞書がひとつのことばを立項するためにヒイヒイ言いながら行を削ったり紙を薄くしたり付録を別冊化したりしているのを尻目に、デジタル辞書は入れたいことばをじゃんじゃん立項することができます。

 

スーパー大辞林3.0」は、従来の紙辞書であればまず立項しないであろうと思われる流行語やネット俗語、単純な複合語などを大量に立項しています。デジタル版に注力している辞書には他に小学館の「デジタル大辞泉」があり、こちらも定期的に項目を追加し続けていますが、「スーパー大辞林3.0」の項目のほうが、何と申しますか、全体的にヤバい感じです。

 

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