彼女のような髪型をなんと呼称するでしょう。
「二つ結び」でも「二つ結い」でも「ツーテール」でも「ツインテール」でもいいのですが、個人的には「おさげ」が一番しっくりきます。
辞書では「おさげ」は編むもの
ところが、国語辞書を引いてみると、雲行きが怪しくなります。
少女の髪の結い方。編んで肩のあたりに垂らす。「―髪」
――『新明解国語辞典』第7版
髪の結い方の一つ。髪を左右に分けて編み、肩のあたりにさげたもの。(お)下げ髪。
――『明鏡国語辞典』第2版
女性の髪の結い方。頭髪を二つに分け、それぞれを三つ編みにしてたれさげたもの。さげがみ。「―の娘・―の髪〔浅草紅団〕」
――『新潮現代国語辞典』第2版
髪を分けるのに限定するかしないかの違いはあるものの、どの辞書も、髪を編まないとおさげにはならないのだと言っているのです。もちろん、編んだものも「おさげ」であることに全く異論はありませんが、編まない二つ結びも、れっきとしたおさげであると思うのです。他の辞書もほとんど同じ書きぶりで、編まずに二つに分けた髪型に言及している国語辞書は全くと言っていいほど見当たりません。
編まない二つ結びを「おさげ」と呼ぶのはもしかしたらこの世で私ひとりなのかもしれないと背筋が凍りましたが、もちろんそんなことはなく、新聞記事などでも編まない二つ結びをおさげと称している例がいくらでも出てきます。利用者の編集によるオンラインの百科事典である『ピクシブ百科事典』や『ニコニコ大百科』の「おさげ」の項では、編まない二つ結びについて当たり前のように説明されています。
では、なぜ国語辞書には「編まないおさげ」について説明がないのでしょうか。考えられる理由は二つです。
(Ⅰ)編まない二つ結びを「おさげ」というのは新しい用法であり、辞書が追いついていない。
(Ⅱ)編まない二つ結びを「おさげ」というのは昔からある用法なのに、辞書が見落としている。
あらゆる辞書が(Ⅱ)をやらかしていると考えるのはさすがに不自然なので、(Ⅰ)から検討してみます。
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